高知縣護國神社|高知の護国神社を訪ねて

2023年12月。
私の心は、前年に八幡浜で出会った「古風」のご夫婦との再会を期して弾んでいました。
しかし、旅の幕開けは予期せぬ「白」に染まります。
折悪しく四国を襲った大雪により、搭乗予定のフライトが大幅に遅延。
松山空港へ降り立ち八幡浜へ向かったものの、到着した頃にはすでにお店の灯は消え、残念ながら再会は叶いませんでした。
翌朝、窓の外には四国とは思えないほどの銀世界が広がっていました。
松山からレンタカーでの移動でしたが、事前に「念のため」とスタッドレスタイヤをチョイスしておいた自分の直感を、これほど称えたことはありません。
八幡浜から宇和島へと続く峠道では、ノーマルタイヤのまま立ち往生し、雪に足を取られて動けなくなった車が続出。
そんな難所を横目に、私は慎重に、かつ着実に雪道を切り拓き、無事に峠越えを果たすことができました。
雪降る中で仰ぎ見た伊達家の居城・宇和島城の凛とした姿を胸に、車をさらに南へと走らせます。
四万十川のせせらぎを横目に「四万十屋」に立ち寄り、香ばしく焼き上げられたうなぎの長焼定食でエネルギーを補給。
その後、四国の南端・足摺岬まで一気に足を延ばしました。
太平洋を望むジョン万次郎の銅像の前に立ち、吹き付ける冬の潮風を受けながら、かつて未知なる異国に夢を馳せた人々の情熱に思いを馳せる。
激動の時代へタイムスリップしたかのような感覚に包まれながら、私は夜の帳が下りる高知市内へと向かいました。
高知縣護國神社とは?
海を見守る「維新の森」

雪道を越えて辿り着いた高知市内。
喧騒を少し離れ、海沿いの細い道を丁寧に進んでいくと、目的地である高知縣護國神社が姿を現しました。
駐車場に車を停め、そこから「うんと」気合を入れて上り坂を歩み始めます。
一歩一歩坂を上がるごとに、周囲はこんもりとした深い森に包まれ、外界の音が遠のいていくような不思議な感覚に陥りました。
神聖な静寂が支配する境内をさらに奥へと進むと、そこには長い年月を経て深い味わいを湛えた正殿が、厳かに鎮座していました。
ここは明治維新の立役者となった武市半平太、坂本龍馬、中岡慎太郎、吉村寅太郎といった「維新志士四天王」をはじめ、先の大戦に至る高知県出身の出身の殉職者、4万1千余柱という尊い御霊をお祀りする聖域です。
さすがは多くの志士を輩出した土佐の神社だけあり、正殿から漂う空気はどこまでも凛としています。
森の隙間から時折届く潮騒の気配を感じていると、ここに眠る英霊たちが、今もなお土佐の広い海と日本の行く末を、静かに、そして力強く見守り続けているのだという実感が胸に迫ってきました。
歴史の大きなうねりの中で命を懸けた先人たちと対話するかのような、非常に濃密で神聖な参拝のひとときとなりました。
御朱印に刻まれた
「土佐の誇り」

今回授かった御朱印には、高知のアイデンティティが象徴されています。
- 「高知縣護國神社」の力強い墨書き:
幕末を駆け抜けた志士たちの情熱を彷彿とさせる、勢いのある筆致です。 - 五瓜(ごか)に唐花の朱印(中央上):
織田信長や坂本龍馬の家紋としても知られるこの意匠が、護國神社の威厳を際立たせています。 - 「令和五年十二月二十二日」の日付:
雪の峠を越え、静寂の森で手を合わせた、あの凛とした冬の日の記憶が刻まれています。
祭典を通じて平和を願う
高知の安寧を祈り、次のような祭典が執り行われています。
- 4月2日 春季例大祭:春の訪れとともに、郷土の発展と平和を祈念する大切な祭事です。
- 8月15日 夏祭:終戦の日、平和への誓いを新たにし、英霊の御霊を慰めます。
- 11月2日 秋季例大祭:実りの秋に感謝し、国の弥栄(いやさか)を願う恒例の祭典です。
龍馬の視線と桂浜の波音

参拝を終えた私は、吸い寄せられるように桂浜へと向かいました。
そこでは、巨大な坂本龍馬の銅像が、今も変わらず太平洋の遥か先をじっと見つめて立ち尽くしています。
砂浜に降り立ち、波打ち際まで進むと、私はただそこに佇み、打ち寄せては返す波の音に耳を傾けました。
これほどまでに波の音が心地よく、ささくれだった心を無にしてくれるものかと思うほど、長い、長い時間をそこで過ごしました。
しかし、その日の旅はそこでは終わりませんでした。
あまりの天気の良さ、そして晴れ渡る空に誘われるように、私はさらに足を進め、砂浜の先にある展望岬の高台へと向かいました。
一歩ずつ坂を登り、視界が開けた瞬間、目の前に飛び込んできたのは、空と海の境界が溶け合うような、圧倒的な太平洋の水平線でした。
遮るものの何一つないその雄大な景色を仰ぎ見たとき、かつてこの地から世界を見据え、日本の未来を憂い、そして希望を抱いた維新志士たちの志が、時を越えてダイレクトに胸に響いてきました。
彼らが見つめていたのは、この果てしない自由の広がりだったのだと。
吹き抜ける潮風を全身に浴びながら、その情熱の欠片に触れたような気がして、激しく胸を打たれる思いでした。
その後訪れた坂本龍馬記念館では、展示された彼の手紙や遺品の一つひとつが、先ほど岬で感じた「志」をより鮮明な輪郭として伝えてくれました。
旅の彩り:
土佐の「旬」を味わい尽くす

五感を満たした後は、土佐ならではの豊かな食が私を待っていました。
- 「四万十屋」のうなぎ:
四万十川のせせらぎを思い浮かべながらいただく、秘伝のタレを纏った長焼定食。
パリッと香ばしく、それでいて身はふっくらとしたうなぎは、雪道を越えてきた旅人の体に、じわりと力強い活力を注ぎ込んでくれました。
帰り際、おかみさんとのツーショットが旅の記念になっています。 - 絶品・カツオのたたき:
夜、はりまや橋付近の活気ある居酒屋でいただいた本場のたたき。
厚切りにされた身を一口運べば、藁焼きの香ばしさと濃厚な旨みが広がり、これぞ土佐の味だと唸らされる、まさに至福の逸品でした。 - みませ漁港のメヒカリ:
翌朝のニュース情報を頼りにみませ漁港へ直行。
潮の香る漁港で手に入れたのは、冬に旬を迎え、パンパンに脂がのったメヒカリの干物です。
自宅に戻り、静かに炙っていただくと、旬ならではの濃厚な脂の甘みが口いっぱいに溢れ出し、高知の海の豊かさを改めて思い出させてくれる最高のお土産となりました。
アクセスと参拝の基本情報
住所:
高知県高知市吸江213
アクセス:
JR「高知駅」より車で約15分。高知龍馬空港から車で約45分。
高知駅前には、武市半平太、坂本龍馬、中岡慎太郎の銅像が並んでいます。
つい、記念写真を撮りたくなります。
駐車場:
無料駐車場あり。神社までは少し急な坂道を歩きます。
結びに:
太平洋の波音を胸に
龍馬が見つめた太平洋の先に、今の私たちは何を見ているでしょうか。
雪の難所を越え、維新の杜で手を合わせ、波の音に癒された今回の旅。
激動の時代を生き抜いた先人たちの志を想うとき、この穏やかな時間がどれほど尊いものかを痛感します。
「平和で戦争のない世界がいちばん」
高知龍馬空港から飛び立つ機窓から、夕闇に沈む土佐の海に、変わらぬ安寧を祈りました。


