三重縣護國神社|津の護國神社を訪ねて

三重県の中心地、津市。
県庁や美術館が建ち並ぶ都会的な街並みの中に、そこだけ時が止まったかのような静寂を湛えた杜があります。
それが、三重縣護國神社です。
近隣には広大な公園や文化施設があり、日常の延長線上にある場所。
けれど、一歩足を踏み入れると、背筋がすっと伸びるような不思議な感覚に包まれます。
今回は内省と静寂、そして
「沈黙」が持つ温かさを感じられる三重縣護國神社の魅力をご紹介します。
三重縣護國神社とは?
その歩みと深い歴史
この場所を訪れる際、まず心に留めておきたいのは、ここに宿る「想い」の歴史です。
津藩主・藤堂高猷公の慈しみ
三重縣護國神社の歴史は、明治2年(1869年)に始まります。
当時の津藩主、藤堂高猷(とうどう たかゆき)公が、戊辰戦争で亡くなった藩士たちの御霊を祀るために「表忠社(ひょうちゅうしゃ)」を建立したのが始まりです。
現在は、明治維新から大東亜戦争に至るまで、国のために命を捧げられた三重県ゆかりの六万余柱の英霊がお祀りされています。
祈りが紡ぐ静かな平和
護國神社という場所は、決して「戦い」を称える場所ではありません。
そこにあるのは、故郷や家族を想いながら、今の私たちの平和の礎となった方々への、深い感謝と敬意です。
境内に流れる穏やかな空気は、先人たちが心から願った「平和な日常」そのものなのかもしれません。
境内の見どころ:
空を仰ぎ、静寂に耳を澄ます
三重縣護國神社の境内は、驚くほど視界が開けており、空の広さを実感できるのが特徴です。
銅板葺き仕上げの大鳥居

まず目を引くのが、戦災にも耐え当時からの銅板葺きの大鳥居です。
そのスケール感に身を委ね、一礼してくぐり抜けると、日々の細々とした悩み事がどこかへ消えていくような感覚を覚えます。
戦禍を越え、
奇跡の再会を果たした
「阿阿(ああ)」の狛犬
三重縣護國神社の境内には、全国的にも極めて珍しい、ある「奇跡」を体現した狛犬が鎮座しています。
通常、神社の狛犬は「阿(あ)」と「吽(うん)」で一対をなすのが一般的ですが、こちらの青銅製の狛犬は、なんと左右どちらも口を開いた「阿阿(ああ)」の対になっているのです。
なぜ、このような姿で並んでいるのか。
そこには、戦争という激動の時代に翻弄された、切なくも力強い物語がありました。
疎開先で生き延びた、二つの「阿」
かつてこの神社には、もともと二対(計四体)の狛犬が奉納されていたと考えられています。
しかし、大東亜戦争が激化し、金属類が武器の材料として「召集(金属回収)」されることになった際、この狛犬たちもまた、その運命に抗うことはできませんでした。
一度は戦地へと向かうためバラバラになった彼らでしたが、終戦を迎えたとき、奇跡的に生き残っていたのが、それぞれ別の対に属していた二つの「阿」の狛犬だけだったのです。
「無事に帰ってきた」という平和の象徴
昭和32年、当時の社殿造営に際し、疎開先で傷つきながらも生き延びたこの二体の「阿」が、再び一対としてこの場所に奉納されました。
戦地から無事に戻ってきた、いわば「生還した英霊」の化身のようでもあります。
本来なら出会うはずのなかった二体の「阿」が、今こうして並んで空を仰ぎ、口を大きく開けている姿。
それは、戦火を潜り抜けて再会できた喜びを分かち合い、共にこの国の平和を力強く謳歌しているように私には見えました。
参拝の際は、ぜひこの狛犬たちを優しくなでてあげてください。
「厄難を除けて無事に帰ってきた」という強い運気を授かり、無病息災や開運を祈願する、当神社ならではの特別な場所となっています。
境内の砂利と開放感
拝殿へと続く参道両脇には、玉砂利が美しく敷き詰められています。
一歩、また一歩と砂利を踏みしめる音が、心の中の雑音を消していく。
そのリズムに集中することで、いつの間にか深い瞑想状態に入ったような清々しさを味わえるはずです。
祭事を通じて感じる祈りの時間
三重縣護國神社では、季節ごとに厳かな祭典が行われています。
春季例大祭(4月22日)
秋季例大祭(10月22日)
新緑の4月と、秋の深まりを感じる10月。
この両日には、最も重要な例大祭が行われます。
また、8月15日の終戦記念日に行われる「万灯御霊祭」では、多くの提灯に灯がともり、境内は幻想的で温かな光に包まれます。

御朱印とお守り:
気品ある墨跡をいただく
三重縣護國神社の御朱印は、非常に格調高く、凛とした美しさがあります。
凛とした美しさの御朱印

「三重縣護國神社」という、力強くも無駄のない筆致。
余白を活かしたそのデザインは、境内の開放感そのままを写し取ったかのようです。
参拝の記録としてだけでなく、日々を「静かに、正しく生きる」ためのお守りとしても、大切に持っておきたくなる一冊になります。
初穂料:お気持ち(500円〜)
授与時間:9:00 〜 16:30頃 (※最新の情報は現地でご確認ください)
歴史の連続性の中に身を置く
六万余柱の英霊に見守られながら、大きな歴史の流れを感じること。
それは、「自分は一人で生きているのではない」という安心感に繋がります。
その安心感こそが、明日への確かな活力へと変わっていくのです。
アクセスと参拝の基本情報
神社名:三重縣護國神社
(みえけんごこくじんじゃ)
住所:三重県津市広明町13-3
参拝時間:自由(授与所は 9:00 〜 16:30頃)
アクセス: JR・近鉄「津駅」西口より徒歩約5分。
(駅からのアクセスが非常に良く、旅の合間にも立ち寄りやすい場所です)
駐車場:完備
周辺のおすすめスポット:
文化と自然に触れる
参拝の後は、隣接するエリアでさらに心を緩めてみてはいかがでしょうか。
- 偕楽園(かいらくえん)
神社に隣接する公園。自然豊かな散策路があり、四季折々の表情を楽しめます。 - 三重県総合博物館「MieMu(みえむ)」
三重の自然や歴史を深く知ることができるスポット。
カフェも併設されており、一休みするのに最適です。
明日への活力を
チャージする場所
三重縣護國神社は、自分を「ゼロ」に戻してくれる場所です。
「阿・阿」の狛犬と共に静寂を味わい、広い空を見上げる。
ただそれだけで、重たかった心がふっと軽くなるのを感じられるはずです。
津の街を訪れた際は、ぜひこの静かな杜を訪ねてみてください。
きっと、新しい自分に出会える、穏やかな時間が待っています。


