靖國神社|すべての旅の原点を訪ねて

2016年(平成28年)11月。
私は、冷たい秋風が吹く東京・九段下に立っていました。
その1年前に他界した父の喪が明け、吸い寄せられるように向かったのは、日本の祈りの中心である靖國神社でした。
靖国神社とは?
260万柱の御霊が鎮まる聖域

巨大な大鳥居を見上げると、その圧倒的な存在感に言葉を失います。
靖國神社は、明治2年(1869年)に明治天皇の思し召しによって建てられた「東京招魂社」を始まりとします。
幕末の動乱から戊辰戦争、そして後の大戦に至るまで、国を思い、愛する家族を思いながら尊い命を捧げられた方々の「御霊(みたま)」をお祀りしている場所です。
明治12年には「靖國神社」と改称されました。
「靖國」という名には、「国を安らかにする」、「平和な国家を築く」という深い願いが込められています。
身分や階級、性別に関わりなく、国のために尽くされた260万6千余柱の英霊が、現在は「神様」として等しくお祀りされています。

神門に輝く大きな「十六八重表菊」の御紋を見つめながら、私は父のことを想いました。
父はかつて、近衛兵としてこのすぐ近く、皇居の守備に当たっていました。
起床ラッパとともに始まる規律正しい日々、暗号手としての孤独で緻密な任務。
父が若き日に守ろうとした「未来」の中に、今、私は立っているのだという事実に、目頭が熱くなりました。
父が託した三枚の写真

父は生前、不思議なことに兄ではなく弟の私に、三枚の写真を託しました。
- 皇居の衛兵本部前で外套に身を包む、凛々しい立ち姿
- 日光御用邸の儀仗兵本部前で、銃を手に真っ直ぐ前を見据える姿
- そして、暗号手として服務していた頃、戦友たちと寝食を共にした穏やかな記念写真
当時はその重みを深く考えずにアルバムにしまっていましたが、靖國の神域に身を置くことで、ようやく理解できました。
父は、自分が生きた証と、散っていった仲間たちへの想いを、私に繋いでほしかったのだと。
ここで拝受した一冊の御朱印帳。それが、私の「全国護國神社巡り」という長い旅の始まりとなりました
北の丸公園に刻まれた
「父の名前」

参拝後、私は北の丸公園へと足を運びました。そこには、父が所属した「近衛歩兵第二聯隊」の記念碑が静かに佇んでいます。
石碑の裏側に刻まれた膨大な数の名前。
その中から父の名を見つけた瞬間、もどかしさは深い感動へと変わりました。
すぐに実家の姉にLINE電話をかけ、映像越しに母へその文字を届けました。
「お父さんの名前、あったよ」。
東京に来られない母への、最高の親孝行ができた気がしました。

赤レンガが美しい旧近衛師団司令部庁舎(現在は工芸館)を眺めながら、父が歩んだ激動の時代に思いを馳せました。
平和の土台を築いた先人たち
靖國神社に祀られているのは、有名な将軍だけではありません。
父親が共に過ごした同僚の方々、バシー海峡で戦死した伯父、そして名もなき多くの若者たちです。
大東亜戦争での日本人殉職者は約230万から260万人に及ぶと言われています。
私たちが今、自由に旅をし、美味しいものを食べ、笑い合えるのは、その方々が繋いでくれた「平和」という名の土台があるからこそなのです。
靖國から知覧へ、
広がる祈りの輪
その後も靖國への参拝を重ねる中で、一冊の本に出会いました。
『人生を拓きたければ「知覧の英霊」に学びなさい』
その頁をめくるたび、若くして散っていった特攻隊の方々の覚悟に触れ、「知覧へ行かなければならない」という強い衝動に駆られました。
その想いを友人に話したところ、不思議な縁が繋がり、2025年1月、知覧特攻平和会館、そして鹿児島縣護國神社への参拝が実現したのです。
護國神社巡り、そして知覧への旅……。私の人生の転機となる出来事は、いつもこの靖國の地から始まっています。
御朱印

すべての巡拝の原点となった、記念すべき最初の一枚です。
日付「平成二十八年十一月二十五日」:
この日から、私の「祈りのバトン」を繋ぐ旅が始まりました。
「靖國神社」の潔い墨書き:
一切の飾りを排したような、清廉で力強い筆致です。
祭事
春季例大祭 4月21日~23日
みたままつり 7月13日~16日
秋季例大祭 10月17日~19日
参拝情報
- 名称:
靖國神社 - 住所:
東京都千代田区九段北3丁目1−1 - 由緒:
明治2年(1869年)に明治天皇の思し召しによって創建された「東京招魂社」が始まり。 - 見どころ:
- 遊就館:
英霊の遺書や遺品が展示されており、本で読んだ知覧の特攻隊の真実にも触れられます。 - 北の丸公園:
近衛歩兵第一聯隊・第二聯隊跡の碑があり、近衛兵としての歴史に触れられます。
- 遊就館:
結びに
一枚の写真、一通の電話、そして一冊の本。
父から始まったこの旅は、今や日本全国、そして知覧の空へと繋がっています。
先人たちが夢見た「安らかな国」を、私たちは守れているでしょうか。
「平和で戦争のない世界がいちばん」
今日の私たちの「生」がある。
靖國の御朱印帳を開くたび、その原点に立ち返ることができます。

